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【ベルベットPPのトリセツ】

2024.08.20技術紹介

ベルベットPPの特性についてのレポート

高級感のある濃色表現、滑り感のある手触りのベルベットPP加工、

いろいろな実験をしてその特異な性質について分かったことをレポートします。

一度使ってみたいと興味をお持ちの方はぜひご一読ください。

レポート①:フィルムが厚い!

①新シェルリンシルク見本01

通常のクリアPP、マットPPのフィルム厚27ミクロンに対し、ベルベットPPは36ミクロン(1ミクロン=1/1000ミリ)。すこし紙の厚みを感じる程です。

しかしフィルムに厚みはありますが、はっきりしたエンボス柄(凹凸)がある紙は、加工後も凹凸表現が生かされています。
(写真画像は「新シェルリンシルク」)

ですが、柔らかめの風合いの紙をセレクトする場合、ベルベットPPをかけると用紙本来の質感は伝わりにくくなります。

特殊紙×ベルベットPPの組み合わせとして、加工問題はあまり無さそうに感じますが、用紙本来の質感(手触り)がなくなる点を考えると、アートポスト以外との組み合わせはすこしもったいないような気もします。

レポート②:光を反射しない!

エスプリVエンボスアラレ:説明入り加工見本

撮影をする時もベルベットPPは蛍光灯の光を反射しないので、見た目が白けてしまうことがありません。

ですがその弊害として、光沢系の紙に加工すると紙の光沢がなくなってしまいます。

キラキラしている紙にクリアPPやマット加工をおこなうと、多少キラキラは抑えられますが、光沢は残ります。ですが、ベルベットPPを加工してしまうと、光沢がゼロになってしまうので、特殊紙×ベルベットPPをするメリットはあまり感じられないかと思います。

レポート③:定着が弱い!

気泡入り見本(五感紙キラ)

特定の紙のベタ面には定着せず細かく浮いた状態になることが確認できています。

サンライズの基本紙の中から抜粋でテストを行いましたが、同様の症状が出たのは現状、「五感紙キラ(写真画像)」の1種のみでした(2024年6月3日時点)。

  • 他の紙種でも出ましたら情報を共有しますので、もし似た事例をご存知でしたらお知らせください

濃色のベタでなければここまでの浮きが発生することも無いかと思われますが、紙質的に五感紙は要注意です。

レポート③-2:オンデマンド印刷+タチキリにかかるベタは絶対NG!

前項「定着が弱い!」の別トラブル紹介ですが、オンデマンド印刷(表紙)でタチキリ付近に黒い枠等のデザインをお考えの方は、ベルベットPPの採用は危険です!

画像はオンデマンド印刷の黒ベタをタチキリ付近に配置し、ベルベットPPを施した実験用の製本物ですが、箱に入れて保管し、時折出し入れをおこなうという扱いをした結果、ベルベットPPの浮き、剥がれを確認しております。(時間経過としては1ヶ月程度)

作業段階で避けられる事象ではないため、タチキリ付近に黒ベタ&高濃度のデザインを配置しないよう、原稿作成時からご注意ください!(敢えて危険性の高いデザインにされた場合、このような事象が起こりましてもクレーム対象外となりますので、ご承知おきください)

タチキリ付近に高濃度のベタが無い見本では、現在のところ剥がれ等は確認できておりません。なお、経年による変化については、2024年4月からの取扱いのため未検証になります。

  • 今後、情報公開が必要な事例が発生した場合はこういうった形で発信して参ります

下記見本の使用紙は上から
サンライズメタルライトブルー・エスプリVエンボスアラレ・ペルーラスノーホワイト・ディープマット・クラフトリプロライナー・羊皮紙・しこくてんれい白

レポート③-2:オフセット印刷なら剥がれの面では大丈夫とは言っても

「五感紙荒目 純白キラ」にベルベットPP(オフセット印刷)

オンデマンド印刷+五感紙キラ+ベルベットPPの組み合わせによる加工フィルムの浮きが顕著だったため、それならばオフセット印刷ではどうか?を、実験してみました。

黒と基本色の100%濃度の掛け合わせで、インキを盛りに盛って、凹凸有りの特殊紙3種で試してみたところ……、

ベタが霜降り状態になるほどの気泡は入りませんでしたが、やはりそれなりに気泡は入ります(参考までに五感紙キラの加工前の画像もご覧ください)。

つまりベタ印刷+五感紙キラ+ベルベットPPは、オフセット・オンデマンドに関わらず気泡が目立つ結果となります。

  • 他の特殊紙ではボス絹には多少、マーメイドはほぼ無しという結果でした

レポート④:色上質黒がスゴ化け!

色上質黒へのベルベットPP加工見本

以前は黒色のマット系の特殊紙もありましたが、どんどん廃盤になり無くなってしまいました。

ですが、身近な用紙である「色上質黒」にベルベットPPを施すと、黒さ、手触り、共に良い高級感のある仕上がりに!

ベタ印刷ではなく紙そのものが黒い場合、フィルム剥がれのリスクは一切無しです。

ただし、次のレポート⑤に記載している指紋のリスクは高くなりますので、目立たぬよう全面に何らかの印刷柄があるほうが望ましいでしょう。

レポート⑤:指紋が付きやすい!

指紋入り見本

指紋は濃色のベタ面を触るとどんどん付いていき、とても目立ちます。

ベルベットPPの滑りの感覚は、別の言い方をすればゴムのような吸い付き感のある感触で、指の表面の油分を取っていくように指紋が付着していき、拭き取ってもなかなか取れません。

当社の現場でもその点に留意して作業は行なっておりますが、納品後もお取り扱いにはお気をつけてください。

濃色のベタでなければ実際には付いていても目立って見えることはありません。